夏の虫本

古い印刷技術で印刷された図版をこの目で確かめたくて、リトグラフより前の時代の技術である銅版画図版の虫の本を調べながら入れています。

その銅版画の図版が、同じ本でも、単色で販売されたもの、そして、手描きで彩色が施され販売されたものが存在する、ということを海の向こうの古本屋の人々から教えてもらいました。(これらとは別に多色刷りの銅版画、というものもあるのですが、それについてはまた別の機会に。)

日本でも本草学関係の図譜には単色と多色刷りの二通りで予約をとっていたものがあることを何かの本で読んだことがあります。

さらに色々と調べていると、単色で販売されたものを買った当時の所有者が自分で色を塗ってしまっているもの!があることもわかって来て、古書店の目録にはhand-colouredと何喰わぬ顔で書かれているのですが、何となく「匂い」がして、念のため、と写真を送ってもらうと、「あちゃーっ!台無しじゃん。『大人の塗り絵』じゃん!!(しかも高い)」、といかにも素人の仕業で、もとの単色のままの方がきれいだったのに・・・涙・・・というまさに「痕跡本」(犬山のインディーズ系古書店、「古書五っ葉文庫」さんが「元の持ち主の痕跡が残る本」をこのように呼んでおられます。)が存在するということもわかってきました。

なにごとも勉強です。

今回はその「痕跡本」では無いほうの、出版時に職人の手で色を施されたものをご紹介。入荷は来月初旬になる予定です。(無事に入れば・・・)

本書はほとんどが単色版で見つかるらしく、彩色されているものは珍しいそうなのですが、図版の全てが彩色されたわけではなく、全体の三分の一ほどで終わっているのは、著者、監修者、あるいは原画を描いた画家、のいずれかが職人にあまりに高度な要求をしたためでしょうか?

原画を描いたのは、フランスの図鑑の黄金時代(荒俣宏氏の表現でした、たしか。19世紀前半です。)、非常に重要な画家の一人であったプレートル(Jean-Gabriel Prêtre, 1800-1850)。
図版の監修はフランスの植物学者、テュルパン(Pierre-Jean-François Turpin, 1775-1840)。
著者はフランスの動物学者デュメリル(André Marie Constant Duméril, 1774-1860)。
題して"Considérations générales sur la classe des insectes"(「昆虫の分類に関する一般的考察」とでもなりましょうか。)1823年、パリにて出版。

以下の写真は仕入先に撮影をお願いし、掲載の許可をもらい公開しています。