鬼は外、には少し早いのですが・・・

突如として五目豆が食べたくなり、首藤夏世さんの「ああうまかった、うしまけた」を取り出し、買い置きしてあった大豆を洗い、煮立てた汁につけておく。明日の朝、煮始めることができるように。汁を煮ている時、急に母方の祖母の大阪は桃谷の家の台所で嗅いでいた匂いが部屋中にたちのぼり、懐かしいような気持ちになる。

 少し余った大豆を、そういえばこんな食べ方しばらくしていない、と煎り始めると、今度は子供の頃の節分の豆まきのあの本当に必死に、あらゆる闇の角(すみ)にまで豆を投げつけていた頃の気持ちをふと思い出し、これまた切ないような気持ちになる。


 寒い寒いとは言っていても、もうすぐ春なのである。