今度は何をつくろうか・・・

料理に凝って、本棚が料理書だらけになってしまっていた時期があった。
家庭の健康を預かる主婦のように日々の料理を工夫してつくらなければならない立場にないので、「凝った」などという呑気なことが言えるのだけど、でも、料理をし、それを人に食べてもらう、ということを週に一度はかならずやるようにしている。
誰かのためではなく、自分のために。


さて、何度かの引越を経て、なおかつ手元に残っている料理書を見ると、ありゃ、おばあさんの本が多い。
その中でも特に好きで、実際に、多いに活躍してくれているのは、
首藤夏世「ああ、うまかった、うしまけた」(京都新聞社
宇野千代「私の長生き料理」(集英社文庫
沢村貞子「わたしの献立日記」(新潮文庫
の三冊。
(最初の首藤さんの一冊は多分今は絶版で、ほぼ同じ料理が収録されたものが集英社be文庫から「京おんなのおばんさい」という書名で出ています。)


著者の首藤さんは二年ほど前にたしか90を過ぎてから亡くなられた。52歳になってから、料理教室を始められた。52歳というのは、そう、あのメーリアンがスリナムに旅をした歳でもあり、あ、そうだ、あの山本善行さんも古書善行堂を始められたのは、そのあたりのお歳ではないか、と推測しているのですが・・・


宇野千代の本は幸福感とパワーに満ちた元気の出る一冊。簡単でしかもおいしく、文章を読むだけで彼女の「幸福パワー」が伝染しそうだ。


名脇役女優沢村貞子女史の一冊は、レシピ本ではないけれど、日々の献立の記録と食事にまつわるエッセイから構成されていて、まず、「献立」(どの料理とどの料理を組み合わせるか)の参考になり、また、エッセイでは、夫との生活を大切にするために、芸能界のしきたりに背くこともやってのけたところがとっても素敵である。(そのために「巨匠」といわれた監督より、二度とお声がかからなかったという。この巨匠って・・・)
この人の魅力は、人生で何を切り捨て、あるいは諦め、何を大切にするかをきちんと心得、それを実践しているところ。


こうした日本の女性の先輩たちの本を手に取って、幸い、和食の食材が手に入りやすい台湾で、僕にとっては舌になじんだ、台湾人にとっては初めての味をこしらえることで、週に一度、よい時間を過ごせている、と僕は思うのです。


台湾の秋、台灣欒樹という木があちこちで茶色い実をつけています。