台北も秋の空気が・・・

数年前の中秋節。友人宅で焼き肉の煙越しに月を眺めながら、「ああ、今年も夏が終わったね。」などと話していたことを思い出す。
僕にとっては「日月潭」の水泳大会が終わると、夏の最後を味わったという感覚。
そして多分、台湾人にとっては、焼き肉、いや、「中秋節」が終わると夏が本当に終わってしまったと感じるのだろうなあ。
そういう寂しさをしみじみ味わうよりも、焼き肉でパっと楽しんだ方が精神的にはいい、というので「中秋節の焼き肉」は定着したのかもしれない。


台風が去ってから、本当に空気が入れ替わって、もう夏のかけらもない。
夏から秋への季節の変わり目、たんすから長袖を出し始めることになると、少し精神的に哀しい方向に傾きやすい。
なんか、20年近く前に、半袖がやや肌寒く感じる夜の御堂筋を歩いていた時に感じた気持ちがそのままぶり返して来る。


ということで、今週はできる限り外にも出て、人と会って、話をしようと思います。
ある人から聴いたとあるパン屋さんの話。
もともとフランスパンの専門店だったこの店、ところが台湾では甘くなく、硬いパン、というのはまだまだこれを味わう人が少ない。
テナントとしてのプレッシャーもあった。
短期の売上増をもくろんで、台湾で受けの良い「日式」(和風)のパンの売り出しを始めた。
そうすると、当初来てくれていた外国人のお客さんがぱったり来なくなった。
売上はさらに低迷。
フランスからもおしかりを受けた。
そこでもう一度基礎を叩き直してもらおうと、フランスから職人を呼び、トレーニング。
初心に戻って再び純フランスパンを作って行く。
折よく、台北デフリンピック
外国人のお客さんが「ここのパンはおいしい」と評判になった。
デフリンピックも終了、台湾人の「食習慣」はそんなにすぐに変わりはしないから(フランスパンに「お宅のパンは硬い」、とクレームをつける人がいたよう・・・)すぐに売上が伸びる、という訳ではないのだけど・・・
「ここで、ちょっと辛抱して、路線を維持した方がいいですね。」と僕はなんか、人ごとだと気持ちが軽いので、その人にコメント。
あとで思った、あっ、これ今の自分にかけるべき言葉かもしれない。


「意地で維持」という蟲文庫の店主、田中美穂女史がどこかで書いておられた言葉をかみしめる。


がらがらの棚を良い本で埋めたい
いま、いろいろと仕入をしています。
成果が出るのは、もうしばらく先ですが、楽しみにしていて下さい。