故宮にて

またまた台風が近づいていて、台北は雨の週末。
中秋を過ぎたあたりから街角にふかした菱(ひし)の実や落花生を売る屋台が現れるようになった。
秋の到来だ。
とは言っても、今週あたりは残暑(「秋老虎」と言う。)が厳しく、カッと照りつける太陽が刺すようで、ガジュマルの木陰を頼りに歩道を歩くような日々だった。


そんな中、水曜日、故宮博物院で開かれていた「浙派」の展示の前半を見て来た。
かの雪舟が中国に渡った時に師事をした李在や、花鳥画で名高い呂紀といった画家たちがこの「浙派」に属するそうで、呂紀の一枚の絵の前に立った時、花盛りの杏の枝に遊ぶ雀らをじっと見つめていると、次第に春の空気やひざしを感じ、雀のピーチクパーチクとさえずる声が聞こえて来そうで、しばし恍惚としてしまった。


たった一枚でも絵の中に入り込める瞬間を持てた展覧会は「来て良かった」と思う。
何やら理屈を並べ、やたらもがいていた若い頃は、なかなかこういう時間は持てなかった。


この「浙派」の展示は、10月1日より作品が入れ替わって、12月25日まで。
今年6月、本館の脇にオープンしたレストラン、故宮晶華もデザートに頼んだ杏仁豆腐がひんやりと旨く、またお店の人の誇らしげに働いている自然な笑顔も良かった。
価格はかなり高めだが、たまの贅沢も良い。
来週も後半の展示を見に、足を運ぼうと思う。